21世紀文明研究会 「光化計画」

■仕組みから変えてゆくことの大切さ

人は、無限の可能性を秘めてこの地上に存在し、生まれてから死ぬまでの間に、その可能性のほんの一部を人生を通して体現してゆきます。現代の社会に生きる私達は、とのくらい広く、また深く、それら人の可能性を発揮することができるでしょうか。自己実現という言葉がありますが、これも、自分が生まれ持った可能性のほんの一かけらなのかもしれません。

現代社会の中での個人の自己実現の選択肢は、人が本来持っている可能性の幅の広さに対して、ごく限られた範囲のものになっています。その限られた範囲とは、“お金に換算できるもの”の範囲になります。人々は、この範囲の中の事象に人生の大半を掛けて生きておりますが、お金に換算出来るものもあれば、お金に換算することは出来ないが、人として、自分の価値や存在意義を表現してゆくには十分な事柄が沢山存在しています。

このお金に換算出来るものというのは、実は人が表現出来る自己実現の範囲の中では、ほんの一握りのものでしかなかったことに気付く必要があります。

例えば、交通手段がなくて困っている人々のために、車と車の運転サービスを提供してあげ、彼らをあちらこちらに連れて行って差し上げることが大好きで、そこに生き甲斐を感じる人が居たとします。しかし、現代社会では、これを生業としながら自分自身の生活を成り立たせてゆくことは非常に困難といえます。なぜならば、そこに大きなお金が動く仕組みを導入することが難しいためです。同じように、子ども達の成長や価値観の育成に必要な良い絵本を読んで聞かせることが大好きだった人も、それで生活してゆくことは出来ません。本を読んで聞かせるという行為に大きなお金が必要ないからです。現代社会では、人、一人が生きてゆくために必要される以上のお金が動く、いわゆる“市場性”の大きなものを仕事としてゆかなければ、自分のお金を創り出すことが出来なくなっています。

この様に、「お金に換算出来るものの範囲の中に集中して生きる現代の人々」という様な構造が出来上がっています。

現代社会は、これを成し遂げるために、人が集まる集団であったならば、必ず自然発生的に営まれるはすであろう人々の社会参画や勤労奉仕という行為とお金とを連動させました。つまり、社会参画の中の一番大きな割合を占める労働とは「お金を稼ぐことである」という様に、働くこととお金がイコールで結ばれました。

生きるためにはお金が必要ですので、確かにこの仕組みは、誰もが労働を通じて社会参画する義務があるという社会通念を形作り、多くの労働力を得たことで高度な発達社会を作り出すことが出来ました。しかし、お金と労働を連動させたことの弊害として、人々の労働意欲は、よりお金が稼げる方向へと流れ、業種や職種に対する労働人口に大きな偏りが出てくるようになりました。

大きなお金が動く金融や経済に対する人々の関心はより高まり、同時に、温かさや優しさ、思いやりや奉仕など人々の心のソフト面を象徴するような仕事は、蔑ろにされ、どんどん淘汰される方向に進みました。

現代の様な産業や運輸、通信やその他諸々の技術が十分に発達した円熟社会において、人々に求められていることは、一体何でしょうか。それは、たぶん、更なる経済の発展ではなく、人がより人間らしく豊かさや幸せを感じられる社会に住むことではないでしょうか。しかし、その様なソフト面が充実した社会の実現のために必要とされるきめ細やかなサービスには、大きなお金が動かないことが多いのです。つまり、経済効果というものがほとんど得られないものである場合が大半なのです。

人々の生活を便利に豊かにするための産業重視で技術革新が最優先だった時代は、既に終焉を向かえ、現代は、人が人らしい本当の豊かさを追求する次のステージに入ってゆく時期になったのだろうと思います。

 

■人がイメージできない世界は決して実現しない

社会の成り立ちや根幹の仕組みである社会構造が変化してゆく為には、まず、その社会の構成員である人々の中に、自分たちがこれから進んでゆく将来の在り方の一つの選択肢として、実現可能な具体的な未来の姿をイメージできる様になることが大切になります。社会とは、不特定多数の個人、団体、企業、などの集合体ですので、各分野に携わる人々の意識の中に何かしらの変化の兆しが現れ、次はこういった世界を社会を創ってゆこうというモデルが出来たところから新しい時代が生まれてきます。

 

■光化計画とは

光化計画の光は、物質的な光を指すのではなく、人々が目標として定めることが出来る指針やモデルのことを意味します。目標の定まらない時代。どこに進んで行けばよいのかなかなか定まらない今の時代の中に、明確で明瞭なモデルを創り出してゆくことは、当に未来の光の様ですので、光化計画としています。

中山直樹
2012/2/18